ケアプランの軽微な変更で一連の業務が必要か(厚生労働省)

居宅介護支援事業所で働いているケアマネージャーは利用者の状況や事業所の都合などでケアプランの内容をほんの少しだけ変えるケースがあります。そのような場合でも毎回一からケアプランを作って各事業所を招集してサービス担当者会議を開いてといった一連の業務が必要なのか、厚生労働省は「軽微な変更の場合」については必要はないという通知を出しています。この軽微な変更とは何か、一連の業務とは何かを正しく理解するためにこの記事を書きました。「軽微な変更」と「一連の業務」という微妙な表現を理解するための助けになると幸いです。

ケアマネはケアプラン作成にあたっての一連の業務を行うことが原則

「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について(平成11年7月29日老企22号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)」(以下、「基準の解釈通知」という。)の「第Ⅱ 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」の「3 運営に関する基準」の「(7)指定居宅介護支援の基本取扱方針及び具体的取扱方針」の「⑯居宅サービス計画の変更」において、居宅サービス計画を変更する際には、原則として、指定居宅介護支援等の事業及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚令38、以下「基準」という。)の第13条第3号から第12号までに規定されたケアプラン作成にあたっての一連の業務を行うことを規定している。

なお、「利用者の希望による軽微な変更(サービス提供日時の変更等)を行う場合には、この必要はないものとする。」としているところである。

第13条第3号から第12号までに規定されたケアプラン作成にあたっての一連の業務とは

以下は、ケアマネジャー(介護支援専門員)の業務に関する指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第13条第3号から第12号までに規定されたケアプラン作成にあたっての一連の業務とそれに対応する項目、具体的内容を表にまとめたものです。

条文の第何号 項目 具体的内容
第三号 日常生活の支援計画作成 利用者の心身の状況や家族の状況に応じて、指定居宅サービスを継続的かつ計画的に利用する計画を作成。
第四号 サービス計画の範囲拡大 介護給付対象サービス以外にも、保健医療サービスや福祉サービス、地域の自発的な活動によるサービスも計画に含める。
第五号 情報提供 地域内の指定居宅サービス事業者の情報を提供し、利用者や家族がサービスを選択しやすくする。
第六号 利用者のアセスメント 利用者の能力や既に受けているサービス、環境を評価し、問題点を明らかにして解決すべき課題を把握する。
第七号 訪問と面接 利用者の家を訪問し、面接を通じて利用者と家族から情報を得る。面接の目的を十分に説明し、理解を求める。
第八号 サービス計画の原案作成 利用者と家族の希望、アセスメントの結果に基づき、適切なサービスの組み合わせを検討し、居宅サービス計画の原案を作成。
第九号 サービス担当者会議 居宅サービス計画の原案に関して、サービス提供者との会議を開き、利用者の状況について情報共有し、専門的な意見を求める。
第十号 利用者への説明と同意 居宅サービス計画の原案を利用者や家族に説明し、文書による同意を得る。
第十一号 計画の交付 居宅サービス計画を作成したら、それを利用者とサービス提供者に交付する。
第十二号 事業者への計画提出要求 指定居宅サービス事業者に対し、訪問介護計画などの基準に基づいた計画の提出を求める。

この表は、ケアマネジャーが介護サービスを提供する上での一連の業務フローとそれに基づく条文の対応を示しています。条文原文は以下です。

(指定居宅介護支援の具体的取扱方針)
第十三条 指定居宅介護支援の方針は、第一条の二に規定する基本方針及び前条に規定する基本取扱方針に基づき、次に掲げるところによるものとする。

~省略~

三 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に当たっては、利用者の自立した日常生活の支援を効果的に行うため、利用者の心身又は家族の状況等に応じ、継続的かつ計画的に指定居宅サービス等の利用が行われるようにしなければならない。
四 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に当たっては、利用者の日常生活全般を支援する観点から、介護給付等対象サービス(法第二十四条第二項に規定する介護給付等対象サービスをいう。以下同じ。)以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めて居宅サービス計画上に位置付けるよう努めなければならない。
五 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成の開始に当たっては、利用者によるサービスの選択に資するよう、当該地域における指定居宅サービス事業者等に関するサービスの内容、利用料等の情報を適正に利用者又はその家族に対して提供するものとする。
六 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に当たっては、適切な方法により、利用者について、その有する能力、既に提供を受けている指定居宅サービス等のその置かれている環境等の評価を通じて利用者が現に抱える問題点を明らかにし、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握しなければならない。
七 介護支援専門員は、前号に規定する解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない。この場合において、介護支援専門員は、面接の趣旨を利用者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。
八 介護支援専門員は、利用者の希望及び利用者についてのアセスメントの結果に基づき、利用者の家族の希望及び当該地域における指定居宅サービス等が提供される体制を勘案して、当該アセスメントにより把握された解決すべき課題に対応するための最も適切なサービスの組合せについて検討し、利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、提供されるサービスの目標及びその達成時期、サービスの種類、内容及び利用料並びにサービスを提供する上での留意事項等を記載した居宅サービス計画の原案を作成しなければならない。
九 介護支援専門員は、サービス担当者会議(介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために、利用者及びその家族の参加を基本としつつ、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者(以下この条において「担当者」という。)を招集して行う会議(テレビ電話装置その他の情報通信機器(以下「テレビ電話装置等」という。)を活用して行うことができるものとする。ただし、利用者又はその家族(以下この号において「利用者等」という。)が参加する場合にあっては、テレビ電話装置等の活用について当該利用者等の同意を得なければならない。)をいう。以下同じ。)の開催により、利用者の状況等に関する情報を担当者と共有するとともに、当該居宅サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。ただし、利用者(末期の悪性腫瘍の患者に限る。)の心身の状況等により、主治の医師又は歯科医師(以下この条において「主治の医師等」という。)の意見を勘案して必要と認める場合その他のやむを得ない理由がある場合については、担当者に対する照会等により意見を求めることができるものとする。
十 介護支援専門員は、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等について、保険給付の対象となるかどうかを区分した上で、当該居宅サービス計画の原案の内容について利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得なければならない。
十一 介護支援専門員は、居宅サービス計画を作成した際には、当該居宅サービス計画を利用者及び担当者に交付しなければならない。
十二 介護支援専門員は、居宅サービス計画に位置付けた指定居宅サービス事業者等に対して、訪問介護計画(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号。以下「指定居宅サービス等基準」という。)第二十四条第一項に規定する訪問介護計画をいう。)等指定居宅サービス等基準において位置付けられている計画の提出を求めるものとする。

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(引用:2024年4月11日)

上記は、軽微な変更(サービス提供日時の変更等)を行う場合に行う必要がないと示された範囲に限った一連の業務を示しましたが、ケアマネの業務について全体像としてはこちらの記事でもわかりやすく紹介されています。

ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)の7つの必須業務と介護報酬

【2021年版】居宅サービス計画書(ケアプラン) 第1表~第7表の様式

軽微な変更(サービス提供日時の変更等)を行う場合にはケアプラン作成にあたっての一連の業務を行う必要はない

こちらの内容は、厚生労働省より示された「利用者の希望による軽微な変更」の例と、その対応方法です。

サービス提供の曜日変更

利用者の体調不良や家族の都合などの臨時的、一時的なもので、単なる曜日、日付の変更のような場合には、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
なお、これはあくまで例示であり、「軽微な変更」に該当するかどうかは、変更する内容が同基準第13条第3号(継続的かつ計画的な指定居宅サービス等の利用)から第12号(担当者に対する個別サービス計画の提出依頼)までの一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである。

サービス提供の回数変更

同一事業所における週1回程度のサービス利用回数の増減のような場合には、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
なお、これはあくまで例示であり、「軽微な変更」に該当するかどうかは、変更する内容が同基準第13条第3号(継続的かつ計画的な指定居宅サービス等の利用)から第12号(担当者に対する個別サービス計画の提出依頼)までの一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである。

利用者の住所変更

利用者の住所変更については、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
なお、これはあくまで例示であり、「軽微な変更」に該当するかどうかは、変更する内容が同基準第13条第3号(継続的かつ計画的な指定居宅サービス等の利用)から第12号(担当者に対する個別サービス計画の提出依頼)までの一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである。

事業所の名称変更

単なる事業所の名称変更については、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
なお、これはあくまで例示であり、「軽微な変更」に該当するかどうかは、変更する内容が同基準第13条第3号(継続的かつ計画的な指定居宅サービス等の利用)から第12号(担当者に対する個別サービス計画の提出依頼)までの一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである。

目標期間の延長

単なる目標設定期間の延長を行う場合(ケアプラン上の目標設定(課題や期間)を変更する必要が無く、単に目標設定期間を延長する場合など)については、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
なお、これらはあくまで例示であり、「軽微な変更」に該当するかどうかは、変更する内容が同基準第13条第3号(継続的かつ計画的な指定居宅サービス等の利用)から第12号(担当者に対する個別サービス計画の提出依頼)までの一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである。

福祉用具で同等の用具に変更するに際して単位数のみが異なる場合

福祉用具の同一種目における機能の変化を伴わない用具の変更については、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
なお、これはあくまで例示であり、「軽微な変更」に該当するかどうかは、変更する内容が同基準第13条第3号(継続的かつ計画的な指定居宅サービス等の利用)から第12号(担当者に対する個別サービス計画の提出依頼)までの一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである。

目標もサービスも変わらない(利用者の状況以外の原因による)単なる事業所変更

目標もサービスも変わらない(利用者の状況以外の原因による)単なる事業所変更については、「軽微な変更」に配当する場合があるものと考えられる。
なお、これはあくまで例示であり、「軽微な変更」に該当するかどうかは、変更する内容が同基準第13条第3号(継続的かつ計画的な指定居宅サービス等の利用)から第12号(担当者に対する個別サービス計画の提出依頼)までの一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである。

目標を達成するためのサービス内容が変わるだけの場合

第一表の総合的な援助の方針や第二表の生活全般の解決すべき課題、目標、サービス種別等が変わらない範囲で、目標を達成するためのサービス内容が変わるだけの場合には、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
なお、これはあくまで例示であり、「軽微な変更」に該当するかどうかは、変更する内容が同基準第13条第3号(継続的かつ計画的な指定居宅サービス等の利用)から第12号(担当者に対する個別サービス計画の提出依頼)までの一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである。

担当介護支援専門員の変更

契約している居宅介護支援事業所における担当介護支援専門員の変更(但し、新しい担当者が利用者はじめ各サービス担当者と面識を有していること。)のような場合には、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
なお、これはあくまで例示であり、「軽微な変更」に該当するかどうかは、変更する内容が同基準第13条第3号(継続的かつ計画的な指定居宅サービス等の利用)から第12号(担当者に対する個別サービス計画の提出依頼)までの一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである。

 

ケアプランの軽微な変更の内容について(サービス担当者会議)

基準の解釈通知のとおり、「軽微な変更」に該当するものであれば、例えばサービス担当者会議の開催など、必ずしも実施しなければならないものではないです。しかしながら、例えば、ケアマネジャーがサービス事業所へ周知したほうが良いと判断されるような場合などについて、サービス担当者会議を開催することを制限するものではなく、その開催にあたっては、基準の解釈通知に定めているように、やむを得ない理由がある場合として照会等により意見を求めることが想定されると示されています。

サービス利用回数の増減によるサービス担当者会議の必要性

単なるサービス利用回数の増減(同一事業所における週1回程度のサービス利用回数の増減など)については、「軽微な変更」に該当する場合もあるものと考えられ、サービス担当者会議の開催など、必ずしも実施しなければならないものではない。
しかしながら、例えば、ケアマネジャーがサービス事業所へ周知した方が良いと判断されるような場合などについて、サービス担当者会議を開催することを制限するものではなく、その開催にあたっては、基準の解釈通知に定めているように、やむを得ない理由がある場合として照会等により意見を求めることが想定される。

ケアプランの軽微な変更に関するサービス担当者会議の全事業所招集の必要性

ケアプランの「軽微な変更」に該当するものであれば、サービス担当者会議の開催など、必ずしも実施しなければならないものではない。
ただし、サービス担当者会議を開催する必要がある場合には、必ずしもケアプランに関わるすべての事業所を招集する必要はなく、基準の解釈通知に定めているように、やむを得ない理由がある場合として照会等により意見を求めることが想定される。

「利用者の状態に大きな変化が見られない」の取扱い

「利用者の状態に大きな変化が見られない」の取扱いについては、まずはモニタリングを踏まえ、サービス事業者間(担当者間)の合意が前提である。
その上で具体的には、「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」(平成11年11月12日老企第29号)の「課題分析標準項目(別添)」等のうち、例えば、
・ 「健康状態(既往歴、主傷病、病状、痛み等)」
・ 「ADL(寝返り、起き上がり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄等)」
・ 「IADL(調理、掃除、買い物、金銭管理、服薬状況等)」
・ 「日常の意思決定を行うための認知能力の程度」
・ 「意思の伝達、視力、聴力等のコミュニケーション」
・ 「社会との関わり(社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感等)」
・ 「排尿・排便(失禁の状況、排尿排泄後の後始末、コントロール方法、頻度など)」
・ 「褥瘡・皮膚の問題(褥瘡の程度、皮膚の清潔状況等)」
・ 「口腔衛生(歯・口腔内の状態や口腔衛生)」
・ 「食事摂取(栄養、食事回数、水分量等)」
・ 「行動・心理症状(BPSD)(妄想、誤認、幻覚、抑うつ、不眠、不安、攻撃的行動、不穏、焦燥、性的脱抑制、収集癖、叫声、泣き叫ぶ、無気力等)」等を総合的に勘案し、判断すべきものである。

 

まとめ

ケアプランの軽微な変更に該当するかどうかは厚生労働省からざっくりとは示されましたが、どの内容も「一連の業務を行う必要性の高い変更であるかどうかによって軽微か否かを判断すべきものである」という含みを持たせているので確実なものとは言い難いです。以下の記事では、各自治体レベルで軽微な変更に該当するかどうかを事例を踏まえて解釈した内容などが掲載されているので、この記事よりもより具体的に軽微な変更の理解が進むのではないかと思います。

ケアプランの軽微な変更の判断9例 担当者会議の必要性

ただし、Aという自治体がOK という考え方を示したからと言って、Bという自治体が同じように考えるかどうかは分からないというのがこの介護保険の仕組みの困ったところです。省略して良いのか心配をして色々調べているよりも割り切って一連の業務を行ってしまった方が効率的な場合もあると思います。

一方で、一度自分の事業所の管轄の自治体担当者にケースごとに確認しておけると、その後全く同じケースが出てきた時には業務を省略することができる可能性があるので、ケースバイケースで考えていきましょう。地域の事業所で情報共有などをしてどうしてるか確認し合えると良いかもしれないですね。

2024年4月・6月介護報酬改定の情報

 令和6年(2024年)障害福祉サービス報酬改定情報はこちら

令和6年~8年 地域区分(介護)区市町村の等級一覧(2024年4月~)

2024年介護報酬改定後の介護保険サービスごとの介護報酬・単位数

令和6年度介護報酬改定では、4月に変更となる内容と、6月に変更になる内容があります。例えば、訪問介護費の場合、基本報酬部分は4月から、処遇改善加算等は6月から変更という2段階での変更が生じることがあります。詳細は各記事に添付している厚生労働省のサイトからご確認ください。

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補足給付(負担限度額認定)に関わる見直しは、以下のとおりです。 令和6年8月1日施行 基準費用額の見直し 令和7年8月1日施行  多床室の室料負担